2004年11月から2005年12月にかけて,東京都杉並区内の乳幼児施設において発生した延べ29件のNV集団発生事例について検討した. 1) 乳幼児数延べ2,717名に占める発症児数は延べ823名で,1回の集団発生事例で平均30%が発症した.特に0歳児,1歳児などの低年齢児ほど発症リスクが高く約50%が発症した.臨床症状の特徴は嘔吐の発症率が高く79%,下痢は43%,発熱は14%であった. 2) 発症乳幼児137名の便は,発症後3~4日経過時のNV検出率が90%と最も高く,発症10日経過後でも50%以上にNVの排出が認められた. 3) 発症乳幼児141名のうち,当該乳幼児以外に発症者が認められた家庭は104 (74%)であった. 4) 単一保育園において,約7カ月間に3回のNV-GIIによる集団発生があり,3度発症乳幼児3名,2度発症乳幼児5名が認められた.3事例の原因NVの遺伝子型は,GII/4, GII/6, GII/2と異なるものであった. 5) 乳幼児施設29園の全調理従事者104名を対象としてNV検便検査を行った結果,8園(28%)の12名(12%)からNVが検出された.NV感染者のうち発症者は3名(3%)のみで,不顕性感染者が101名中9名(9%)存在していた.