本研究では,国内主要地域で流通・販売されている生食用カット野菜,カット果実およびスプラウトを対象として,一般生菌数を測定し,季節別,月別,地域別に比較した.また大腸菌(E. coli), サルモネラ,腸管出血性大腸菌(EHEC)および腸管毒素原性大腸菌(ETEC)の汚染状況を調べた.カット野菜,カット果実およびスプラウトの一般生菌数は,カット果実が4.3±1.1 log CFU/g, カット野菜が5.7±1.1 log CFU/g, スプラウトが7.7±0.5 log CFU/gであった.カット野菜およびカット果実は夏季に菌数が高かった( p <0.01)が,スプラウトでは冬季,夏季で菌数の差は認められなかった.また,購入地域別での一般生菌数では一部地域で差が認められた.メロンの一般生菌数は,国産が4.1±1.3 log CFU/g, 輸入が5.0±1.2 log CFU/gであり,輸入の菌数が国産と比較して高かった( p <0.01). 大腸菌(E. coli)は,カット野菜1,127検体中45検体(4.0%),カット果実504検体中3検体(0.6%), スプラウト470検体中20検体(4.3%)で陽性であった.サルモネラ,EHEC, ETECは,いずれの検体も陰性であった.以上の結果より,国内で市販されているカット野菜,カット果実およびスプラウトのサルモネラおよび病原大腸菌による汚染は低いことが推察された.しかし,一般生菌数および大腸菌(E. coli)の陽性率が夏季に高いことから,製造工程の衛生管理を徹底し一般生菌数を抑えることが,より衛生的な製品の供給に重要であり,今後病原微生物の検出が増加した場合には微生物基準の設定を考慮する必要がある.