神奈川県内の市中医療機関を受診した患者の便と市販食肉を対象として,ESBL産生菌の検出を試みた.患者下痢便196検体のうち13検体(5.6%)からESBL産生菌が検出され,鶏肉は34検体中17検体(50.0%)からESBL産生菌が検出された.豚肉10検体と牛肉6検体からは検出されなかった.患者便13検体から検出された大腸菌はESBL産生菌で,すべてCTX-Mであった.鶏肉17検体のうちESBL産生大腸菌が13検体から検出され,7検体からCTX-M,5検体からSHV,3検体からTEMが検出された.2検体からは,CTX-MとSHVの2種類の菌株がそれぞれ検出された.ESBL産生 P. mirabilis が鶏肉8検体から検出され,このうち4検体は大腸菌と同じ検体から検出された.ESBL産生 P. mirabilis の内訳は,CTX-M(1検体),TEM(1検体),SHV(1検体),TEMとSHV(1検体)で,4検体からの4株は型別不能であった. 市中医療機関の外来患者下痢便からESBL産生大腸菌が検出され,市販の鶏挽肉からも検出されたことは,ESBL産生菌の感染が鶏肉を介して市中レベルで拡大する可能性を示唆している.