EHEC O157, O26, O111, O103をヤギ乳チーズおよびゴルゴンゾラチーズに添加して,mEC+n, mTSB+n, UPB, mECで培養し,LAMP法,直接法,IMS法による検出率で4種の増菌培養法を比較した.各菌株を少量添加したヤギ乳チーズの非保存検体および冷蔵保存検体では,UPBと比較してそれぞれmEC+nおよびmECで検出能の低下が見られた( p <0.0016).少量添加したゴルゴンゾラチーズでは,非保存検体でmEC+nと比較して,冷蔵保存検体ではmTSB+nおよびUPBと比較してmECによる培養での検出能の低下が見られた( p <0.0011).また,大量添加したゴルゴンゾラチーズでもUPBと比較してmEC+nおよびmECで冷蔵保存による検出能の低下が見られた( p <0.0063).このようにmECでは冷蔵保存による損傷菌に対する大きな検出能の低下が見られ,チーズの検査においては汚染菌の損傷や菌量の少なさを考慮すると,mECの選択には疑問が残る.UPBでは損傷菌に対する検出能の低下は全く見られず,汚染菌が損傷している可能性が高いチーズでは,非選択培地であるUPBは重要な選択肢の一つとなると考えられた.