市販のブリーチーズ表面に認められた褐変の部位より2種類の希なカビ Helicostylum pulchrum と Scopulariopsis flava を分離した.また腐敗酵母 Debaryomyces hansenii を同じ部位から分離した. H. pulchrum は好冷性カビの一種で10℃で良好な生育を示した.一方,同じ条件下で S. flava は生育が非常に遅く, D. hansenii は緩やかな生育を示した.汚染真菌と変色の関連性を調べるため,これらの菌種をチーズ片に接種した.赤,または黄の変色が D. hansenii 単独か, D. hansenii と H. pulchrum , D. hansenii と S. flava ,あるいは3菌種の混合接種によってチーズ片に認められた.変色は接種した菌種が産生する色素類ではなく,乳酸菌が原因であった. H. pulchrum ,あるいは D. hansenii で劣化したチーズに関して,ヒト神経芽細胞を用いた細胞毒性試験を行ったが,その抽出物は毒性を示さなかった.