対数増殖期および定常期の腸管出血性大腸菌O157: H7の凍結損傷について検討した.対数増殖期の未洗浄菌を直接, 水, 50mMリン酸緩衝液 (pH7.0), およびTSB中で凍結保存すると, 生菌数は凍結保存1日目には1オーダー低下し, さらに保存期間の延長に伴って低下した.これら生菌のほとんどは損傷菌であると推察された.しかし, 生理食塩水では, 14日目でも生菌数は約1オーダー低下しただけであった.逆に, 水で洗浄した菌では, 生理食塩水で最も生菌数の低下が大きかった.また, 洗浄菌をTSBで保存した場合以外は, 定常期菌体の未洗浄菌および洗浄菌の生残率はともに対数増殖期菌体よりも高かった. また, 洗浄菌をTSBで保存した場合以外は, 定常期菌体の未洗浄菌および洗浄菌の生残率はともに対数増殖期菌体よりも高かった. E. coli O157: H7対数増殖期の未洗浄菌を種々の濃度のリン酸緩衝液 (pH6.0) 中で3日間凍結後には, 25mMで3オーダー, 100および150mMで1~2オーダー生菌数が低下した.200mM以上では, 生菌数の低下は1オーダーと低かった. 対数増殖期の E. coli O157: H7を種々のpHの50mM緩衝液中で3日間凍結保存した結果, pH5.5~6.5において生残率が高く, この前後では低かった.この生菌はほとんど損傷菌であった.未凍結でも, 洗浄菌は, 未洗浄菌に比べ緩衝液pHの影響を受けにくかった.定常期菌体では, どのpHにおいても凍結保存後の生菌数, 非損傷菌数は対数増殖期菌体よりも多かった.特にpH6.5における生菌はほとんどが非損傷菌であった. 定常期菌体をpH6.5の50mMクエン酸-リン酸緩衝液中で-20℃, 3日間凍結保存後に平板培養法およびBacLightTM法で生菌数を測定した.未洗浄菌で凍結保存後にBacLightTM法により生菌と判定された菌のうちTSA上にコロニー形成できたものは32%, CT-SMAC寒天上で生育できたものは23%と低かった.一方, 洗浄菌では, BacLightTM法による生菌の各々69および66%であった.したがって, -20℃で3日間凍結保存後の未洗浄菌の中には生きてはいてもコロニー形成できない状態の菌が含まれている可能性が示された.