1999年3月, 青森県内の工場で製造されたイカ菓子による集団食中毒事件が発生した.原因菌は, Salumonella OranienburgとS. Chesterであり, 患者は全国46都道府県の1,634名にのぼった.この事件に関連し, 原因食品と製造工場, ならびに原料イカ輸入港周辺と工場周辺などの環境について検査を行った.分離菌について, 生化学的性状, 薬剤感受性試験, PCR法による病原遺伝子検索, PFGEによる遺伝子解析, 耐熱性, 耐乾燥性, 食塩耐性試験などを実施し疫学的考察を試みる一方, 本事例と県内の散発サルモネラ症との関連を考察した.その結果, 工場の高い汚染が判明するとともに, 輸入港付近の海面のゴミと海鳥の糞そして原因工場の下水から, 患者, 食品由来と同一と考えられるS.Oranienburgが分離され, 本事件との関連性が示唆された.環境からはS.Chesterは分離されなかった.また, 分離菌は40℃ 以下の保存ではその菌数に大きな減少はなく, 乾燥には強く, 海水中では長期間生存が可能と考えられた.さらに, 散発サルモネラ症の監視がdiffuse outbreakの発見に有用である可能性が示唆された.