新島の3つのくさや加工場より採取したくさや汁中の微生物相を解析した.解析には培養法と遺伝子学的なタイピング法であるPCR-RFLP法およびPCR-DGGE法を用いた.平板培地で計測した生菌数はTSA培地,BP5G培地,およびABCM培地上で1.2×108~1.5×109/gであった.各々のくさや汁より40菌株を分離し,PCR-RFLP法を用いて分離菌株を群分けしたところ,分離菌株はそれぞれ6~9群に分けられた.各群の代表株を16SrDNAの塩基配列より同定した結果, Pseudomonas 属, Marinobacter 属, Peptostreptococcus 属, Enterococcus 属などに該当した. くさや汁よりDNAを直接抽出し,PCR増幅により得られた16SrDNAをDGGE解析に供したところ,3種類のくさや汁に類似したバンドパターンが認められた.ゲル中より主なバンドを回収してクローニングし,塩基配列に基づいて菌を同定した.その結果, Bacteroides 属, Flavobacterium 属, Fusobacterium 属, Eggerthela lenta , Clostridium 属に該当した.培養法により分離された菌群とPCR-DGGE法によって解析された菌群には大きな違いがあることが判明し,くさや汁中には培養できない菌群が存在していると考えられた.