酸損傷菌は通常よりは選択剤に対して感受性が高く, このような菌を選択培地で計数した場合, 実際の菌数よりも低い値を示す.本研究では数種の抗生物質に対する耐性を付与した病原大腸菌O157: H7株を作成し, 親株との性状を比較した上で, 選択あるいは非選択培地を用いて菌数を測定することで, 酸損傷の影響を評価した.ナリジクス酸およびリファンピシン耐性の導入は, 生育速度と酸に対する感受性に変化を与えなかった.抗生物質を添加したトリプティケース・ソイ寒天 (TSA) 培地で測定した菌数は, 他の選択培地よりも高く, 抗生物質耐性株と対応した抗生物質を含むTSA培地を組み合わせた測定では菌数に減少はなく, 酸損傷の影響を受けなかった.以上の結果, 抗生物質耐性株は酸性食品の接種試験に有益であることが示唆された.