油粕製造工場におけるサルモネラ汚染を制御する目的で, 日常の汚染調査に用いるRAPD法の検討を行った.判定の際のRAPD泳動像におけるバンドの鮮明度は, DNA抽出法, 菌液濃度およびプライマーの種類により異なり, 比較した3種類のDNA抽出法のうちNaI法は菌液濃度およびプライマーの種類に関係なく鮮明度の高いバンドを示した.われわれが改良したBoil-NaI法も供試したすべてのプライマーで鮮明度の高い安定したバンドを形成したのに対して, Boil法は菌液濃度が高いほどバンドが不鮮明であった. 疫学的に S . EnteritidisなどのRAPD法による識別によく使用される16種類のプライマーについて, 油粕製造工場および原料から分離された由来の異なる10血清型46菌株を用いて識別能力を評価した.高い識別能力を示したプライマーはAP47, OPB17およびAP46で, それぞれの識別率は67.4, 60.9, 58.7%であった.3種類を組み合わせた場合の識別率は89.1%に上昇した. これらの結果から, Boil-NaI法と3種類のプライマーを組み合せた手法は, DNA抽出から泳動パターンの評価まで8時間以内に実施できるため, 日常の汚染源追求調査に有効な方法であることが認められた.