現在, 多くの食品企業で Staphylococcus aureus の検査法には直接平板培養法が用いられているが, この方法は検出感度や迅速性に問題がある.本研究ではこうした問題点を改善する目的で, 選択増菌培養後, S. aureus に特異的なspa遺伝子をPCRで検出する方法の有用性を検討した.各種食品200検体について, 増菌培養+PCR法, 平板培養法ならびに増菌培養+平板培養法の3つの方法を用いて S. aureus の検出を行い, 検出感度や検出時間を比較検討した.その結果, 検出率は平板培養法では0.5%であったのに対し, 増菌培養+平板培養法では26.5%, 増菌培養+PCR法では28.0%で, 増菌培養+PCR法は増菌培養+平板培養法とほぼ同様の検出感度を示した.また, 検出時間は増菌培養+PCR法ではおよそ24時間であったのに対し, 他の2つの方法では4~5日を要した.したがって, 本研究で開発した方法は, 食品産業において S. aureus を検出するのに, 迅速かつ高感度な方法であると思われた.