辛子明太子の製造過程における L.monooytogenes の消長を調べた.自作調味液3種 (pH5.9, 6.5および7.0, Awはいずれも0.95) とメーカー4社の調味液 (pH5.7~6.1, Awは0.89~0.93) を用いて L.monocytogenes FCI-Lis10株 (血清型1/2a) を接種し, 増殖実験を行った.6℃では, いずれの調味液中でもFCI-Lislo株の菌数は保存期間に減少した.バラコ試料3種 (pH6.0, 6.5および7.0, Awはいずれも0.97) を用いて, 調味液と同様の増殖実験を行った.6℃で保存したpH6.0の試料では, 菌数の大幅な増加はなく14日目の菌数は接種菌数とほぼ同数であった.自作調味液3種と2社の調味液 (pH5.7および6.3, Awはいずれも0.93) を用いて辛子明太子の製造実験を行い, FCI-Lislo株の消長を調べた.いずれの調味液を使用しても, FCI-Lis10株の菌数は製造実験中に減少した.さらに, pH5.9の自作調味液と上記2社の調味液を用いて辛子明太子の製造実験を行い, FcI-Lis12 (血清型1/2b), FcI-Lis29 (血清型3a) およびLM17 (血清型4b) 3株の消長を調べたが, いずれの調味液を使った製造実験でも3株とも菌数は減少した. したがって, 少なくともpH5.9以下かっAw0.95以下の調味液を使用して6℃ 以下の温度で辛子明太子を製造すれば, L.monocytogenes の菌数は減少していくことがわかった.これは, 温度, pH, Awあるいは浸透圧など複数の要因によって菌の増殖が抑制され, 培養法で検出される生菌数が減少したことによるものと思われ, 辛子明太子製造業者のリステリア対策としては, 調味液のpHとAwをできるだけ低く調整し, 6℃ 以下で製造することが重要と考えられる.