緑茶飲料の香気変化に及ぼす加熱条件の影響について検討し, 以下の結果を得た. 1) 2種類の加熱条件にて調製した緑茶の香気をAEDAにて比較したところ, 加熱による香気変化に大きく影響する6成分は両者に共通して増加した. しかし, 加熱条件により各成分の増加する割合には違いが認められた. すなわち, linalool, β-damascenone, geraniolおよび2-methoxy-4-vinylphenolはレトルト殺菌の条件で最も高い寄与度を示したのに対して, methionalはUHT殺菌の条件で最も高い寄与度を示した. これらの成分の変化は, 官能評価における香調変化の多くと一致したことから, 加熱条件の異なる緑茶の香気差は香気変化に関与する成分の種類の差ではなく, 各成分の含有量の違いにより生ずることを推定した. 2) 加熱による緑茶の香気変化に関与する6成分の生成量と加熱条件の関係について検討したところ, 香気変化に関与する成分は, a) 低温あるいは短時間の加熱で生成するが, 加熱温度が高まるあるいは長時間になると減少するもの, b) 低温あるいは短時間の加熱で生成し, 温度あるいは時間が増加しても急激な生成量の増加が認められないもの, c) 低温あるいは短時間の加熱での生成量は少ないが, 加熱温度が高まるあるいは加熱が長時間になると急激に増加するものの3種に大別することができた. このように香気変化に関与する成分と加熱条件の関係が各々の成分で異なるため, 加熱条件の異なる緑茶は香気差を生じることを推定した.