山梨県産小ウメ果実を用いて, 梅酒I (青梅使用), 梅酒II (成熟果実使用) および梅酒III (過熟果実使用) の3種類の梅酒を調製し, 市販梅酒とともにフレーバー成分の分析と官能検査を行い, 以下のような結果を得た. 1. 梅酒の香気寄与成分についてGC/OによるにおいかぎとAEDA法により, ethyl 2-methylbutanoate, benzaldehyde, phenylacetaldehyde, vanillin, γ-decalactone, δ-decalactoneがすべての梅酒においてFDファクターが高く, 梅酒の香気寄与成分であると考察した. 梅酒IIIからはγ-undecalactoneも同定され, 甘い香気のラクトン類の寄与により, その特徴香が形成されていると考えられた. 原料としたウメ果実 (生果) にすでに存在している香気成分の梅酒香気への寄与は, ラクトン類以外は小さく, 梅酒熟成中に種子中の香気前駆体アミグダリンより分解生成したbenzaldehydeなどの芳香族化合物が重要と考えられる. 官能検査の結果, 香気に有意差は認められなかったが, 梅酒IIの香気が最も好まれた. 2. 梅酒中の有機酸組成は用いた果実の有機酸組成の影響を受け, クエン酸量は梅酒IIIと市販梅酒で高く, 梅酒Iはリンゴ酸含量が高い傾向にあったが, 有機酸含量の違いは官能的に影響をおよぼすものではなかった. 梅酒I, IIIは全フェノール含量が高く, 渋みが強いことが官能検査でも認められた. 3. 適熟状態の小ウメ果実で調製した梅酒IIのフレーバーが従来調製されている梅酒のそれに近いことが推測されたが, 3種の小ウメ梅酒とも十分に飲用を楽しめるものと考えられた.