pH 2~4とpH 7~11において,スケトウダラすり身から可食性フィルムを調製することに成功した.これらフィルムの性状におよぼすpHの影響とフィルム形成メカニズムを検討し,次の結果を得た. (1) すり身タンパク質の等電点(pH 5.2~5.5)から離れるにしたがって,調製したフィルムは強度と透明性に富んでいた. (2) フィルムの引っ張り伸び率,水蒸気透過性および水に対する溶解性はpH による影響をほとんど受けなかった. (3) α-キモトリプシンによるタンパク質消化率が高いことから,すり身フィルムは可食性フィルムとして利用できることが示唆された. (4) 酸性側で調製したすり身フィルムではミオシン重鎖の分解が,アルカリ性側ではミオシン重鎖の多量化が観察され,フィルムの機械的性質との関連性が認められた. (5) 酸性側では疎水結合が,アルカリ性側では疎水結合の他にジスルフィド結合が,すり身フィルムの形成に主として関与していた. 本研究で調製したすり身フィルムを実際に使用するにはその強度が不十分であるため,現在すり身フィルムの機械的性質の改善方法について検討している.