不知火姫菊乾燥花弁の免疫調節機能を明らかにするため,マウスマクロファージ様細胞株RAW264.7のTNF-α産生に及ぼす影響について検討した.不知火姫菊水抽出物はRAW264.7細胞のTNF-α産生促進効果を示したことから,この生理活性物質の同定を試みた.菊抽出物のTNF-α産生促進効果へのポリフェノールの関与を検討するために,ポリフェノール除去処理を行ったが,菊抽出物の活性への影響は認められなかった.また,ポリフェノールはアルコールに高い溶解性を示すことから,菊抽出物のアルコールに対する可溶性を検討したところ,菊抽出物はメタノールにより可溶物および不溶物に分画可能であり,TNF-α産生促進物質はメタノールに不溶であることが明らかとなった.これらのことから,生理活性物質はポリフェノール以外の物質であることが示唆された.次に促進効果が認められたメタノール不溶物の熱安定性について検討したところ,熱水抽出物ではTNF-α産生促進効果の低下が認められなかったことから,生理活性物質は耐熱性であることが示された.また,このような性質に加えて,このTNF-α産生促進物質を含む抽出画分ではタンパク質に特異的な紫外可視スペクトルを示さなかったことから,活性本体はタンパク質以外の物質である可能性が考えられた.そこで,生理活性物質の分離精製を進めていくために,活性の認められた熱水抽出物から作成したメタノール不溶物をゲルろ過クロマトグラフィーにより分画した.菊の代表的な構成成分の一つで,ポリフェノールやタンパク質以外に生理活性物質として考えられる糖の含量を測定することでクロマトグラムを描いた.その結果,糖を含む分子量66000以上の画分のみにTNF-α産生促進活性が認められた.以上の結果から,RAW264.7細胞における不知火姫菊抽出物のTNF-α産生促進作用には高分子の糖類が関与している可能性が示された.