紫甘しょやその加工食品に含まれる真のAN含量を決定するため,HPLCによる一斉定量法の確立を検討した.酸性化溶媒にギ酸を選択し,種々のHPLC分析条件を検討した結果,品種「アヤムラサキ」塊根中に含まれる主要な8種(YGM-1a, -1b, -2, -3, -4b, -5a, -5b, -6)のANピークが良好に分離する条件を設定できた.本条件下では1回の分析に要する時間は40分であり,これまでに比べて分析時間が短縮された.基準色素YGM-6のHPLC分析では,10-6~10-3Mの濃度範囲でピーク面積との間に相関係数が1.000と良好な直線性が得られ,検出限界は11ng以下であった.また,基準であるYGM-6と各YGMとのピーク面積を比較し,定量係数を設定することで,一斉定量を簡便化できた. 本法をPSとその乾燥粉末ならびに加工飲料に適用した結果,「アヤムラサキ」青果物では主要ANの合計は369.1mg/100gであった.また,YGM-4bが最も多く含まれており,ペオニジン系ANの合計が全体の81%を占めていた.「アヤムラサキ」乾燥粉末,清涼飲料水,および醸造酢の主要AN含量はそれぞれ196.9mg/100g, 118.7mg/100g, および15.3mg/100gであり,その組成比はいずれも原料PS青果物と類似していた.