味噌の種類,調理方法および併用する香辛料による抗酸化力の変化を調べた.味噌の抗酸化力は色度の明度,総イソフラボン量やアグリコン量に比例して増加し,豆味噌,米赤色辛味噌,麦味噌,米淡色辛味噌,米甘味噌の順に強かった.味噌を加熱すると,褐色度と抗酸化力は缶詰処理,焙る,炒める,煮るの順に強かったが,逆に,総イソフラボン量とアグリコン量は減少した.電子レンジで加熱した味噌は褐色度の増加やイソフラボンの分解が少なかった.香辛料を添加して加熱した味噌は,抗酸化力がポリフェノール量と相関しなかった.ショウガを添加して加熱した味噌はイソフラボンのアグリコン量は減少したが,抗酸化力とポリフェノール量が増加した.ニンニク,和芥子,唐辛子やゴマを添加して加熱した味噌ではイソフラボンアグリコン量は変化しなかったが,褐色度と抗酸化力が低下した.これらの結果は,味噌の抗酸化力は,味噌に含まれているイソフラボンや香辛料に含まれているポリフェノール化合物より加熱中に生成されるメラノイジンの影響を強く受けることを示唆していた.したがって,ショウガは固有の強力な抗酸化物質を付加して味噌の抗酸化力を増大させ,ニンニク,和芥子,唐辛子やゴマはメラノイジンの生成を抑制して味噌の抗酸化力を低下させたのだろう.香辛料を添加した味噌はいずれも単独味噌より有益な健康上の効果が期待できるであろう