本実験ではコメ糠よりエタノール抽出したコメ糠由来スフィンゴ糖脂質(crude rice glycosphingolipid, RG)の食品機能を明らかにするため,RGを0.5%含む飼料をマウスに2週間にわたり経口投与した.その後,肝臓の遺伝子発現パターンを,DNAマイクロアレイを用いて網羅的に解析を行った.RGの経口投与により,薬物代謝に関連する遺伝子群の発現にはほとんど影響を与えなかったことから,医薬品との相互作用を有する可能性は低いと考えられた.解糖系の遺伝子発現は増加する傾向が認められたが,クエン酸回路に関連する遺伝子発現は,低下する傾向が見られた.脂質代謝に関連する遺伝子として,アセチル-CoAからアセチルカルニチンを生成する反応を可逆的に触媒するカルニチンアセチルトランスフェラーゼ(carnitine acetyltransferase, Crat)の遺伝子発現の有意な増加が認められた.コレステロール代謝に関わる遺伝子として,チトクロームP450(Cytochrome P450, Cyp)の一つである,Cyp7a1遺伝子の発現増加が認められた.これらの結果から,RGはCratやCyp7a1の遺伝子発現を上昇させることにより,脂肪酸代謝やコレステロール代謝を亢進する可能性が示され,機能性を有する食品素材の一つであることが示唆された.