前報において市販納豆菌に匹敵する胞子割合が得られなかった, Bacillus subtilis KFP 4(市販高橋菌より分離)の胞子形成の検討と,食品エキスを用いたMn2+添加を試みた. (1)平板培養の温度を37℃から最適温度の40℃にし,培養時間を延長,遠心分離前にホモジナイズを行ったところ胞子数,胞子割合はともに増加し,特に培養2日後の平板を用いたとき,最多の胞子数が得られた. (2)Mn2+添加濃度を前報の0.1mmol/lから0.01mmol/lに変えることにより,最多の胞子数が得られ,その時の胞子割合は99.5%であった. (3)Mn2+源として五訂増補標準食品成分表に掲載の食品の中でマンガン含量の多かったあおさ,あおのり(生),あおのり(乾),けしの実からエキスを抽出し,NBP培地に添加してKFP 4を培養し胞子形成させた結果,胞子割合90%以上のスターターを調製することができた. (4)0.01mmol/l Mn2+および4種類の食品エキスを用いて調製したスターターで製造した納豆の間には,官能検査の評価に大きな差は見られなかった. (5)Mn2+濃度を各菌株に適切な濃度に調整することで,種々の菌株を高い胞子割合でスターター化できることが示唆された.