クエン酸を用いて骨を軟化し,小アジ魚体すべてを利用した魚味噌の調製を試みた.小アジの魚体全体を細切りし,2.3%(w/w)のクエン酸で4℃,72時間処理し,その後終濃度9%の塩および21%の麹と混合して30℃で100日間発酵させた.魚味噌中の骨片様の異物数は,酸処理区では対照区の1/8に減少していた.対照区では微生物が増殖して乳酸等の有機酸が生成したが,酸処理区では熟成中微生物の増殖が抑制され,乳酸等の生成が殆ど認められなかった.酸処理区では水溶性カルシウムが遊離し,100日間熟成後の水抽出カルシウム量は,300mg/100gだったが,対照区では129mg/100gであった.また酸処理区は,対照区と同程度(対照区の91%)の遊離アミノ酸を含んでおり,酸処理区においてもタンパク分解は進行したことを示していた.大豆味噌に酸処理魚味噌を10%添加して官能検査を行ったところ,魚味噌添加により旨味が増強されることがわかった.これらの結果から,魚体をすべて利用した魚味噌を製造する際,クエン酸処理により骨等が溶解し,品質が向上した製品が得られることが明らかとなった.