3種の澱粉(ウルチ種およびモチ種とうもろこし,小麦)を不飽和度の異なる脂肪酸組成の3種のモノグリセリド(ステアリン酸,オレイン酸,リノール酸)中で加熱処理(150℃,1時間)し,その澱粉特性を調べた.その結果, (1) SEMで澱粉粒の外観は,どの澱粉試料も変化が見られず,糊化,膨化していなかった. (2) DSCの糊化特性では,多価不飽和脂肪酸モノグリセリド中で加熱処理した澱粉のピーク温度が低下し,エンタルピーも減少した. (3) RVAの粘度特性では,不飽和度が高いモノグリセリド中で加熱処理した澱粉ほど粘度低下が著しく,特にモチ種のとうもろこし澱粉では粘性がほとんど消失した. (4) ヨウ素澱粉反応では,不飽和度の高いモノグリセリド中で加熱処理した澱粉ほど,アミロースの分解が進んでいた. (5) GPCの分子量測定では,ステアリン酸モノグリセリドが軽度しか分解していないのに対し,リノール酸モノグリセリドでは,デキストリンにまで極端に分解していた. (6) 全ての測定において,ウルチ種のとうもろこし澱粉と小麦澱粉では挙動に差が見られた. これらの結果から,水分が殆ど存在しない条件下において,モノグリセリド中で加熱処理した澱粉は,外観では変化が見られないが,分子レベルではかなり分解し,特に脂肪酸鎖の不飽和度がこの分解に大きく関与していることが明らかとなった.