イチゴ品種‘章姫’,‘さちのか’,‘紅ほっぺ’の果実に含まれる可溶性固形物含量(SSC)およびグルコース,フルクトースおよびスクロース濃度を,近赤外(NIR)分光法により非破壊的に推定した.熟度の異なる果実の糖濃度を酵素法により分析し,NIR分光法で求めたスペクトル分析結果と比較した.その結果,全ての測定項目とも700~925nmの範囲で最適波長が得られた.また,原吸光スペクトルによって得られたキャリブレーション結果の精度は,二次微分処理やMSC処理を行っても変わらなかった.そこで,3品種を合わせた原スペクトルと化学分析値に基づく新たなキャリブレーションを求めたところ,SSCがR2=0.86,SEP=0.9%,グルコースがR2=0.74,SEP=5.6mg ・ g−1FW,フルクトースがR2=0.50,SEP=6.3mg・g−1FW,スクロースがR2=0.51,SEP=12.5mg ・ g−1FWとなり,品種ごとに作成したキャリブレーション結果とほぼ等しい精度が得られた.したがって,品種や熟度を問わず,700~925nmの原スペクトルを用いることにより,イチゴ果実に含まれる組成別糖濃度およびSSCを推定できると考えられた.