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  • 标题:バクセン酸
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  • 作者:都築 和香子
  • 期刊名称:日本食品科学工学会誌
  • 印刷版ISSN:1341-027X
  • 电子版ISSN:1881-6681
  • 出版年度:2009
  • 卷号:56
  • 期号:9
  • 页码:498-499
  • DOI:10.3136/nskkk.56.498
  • 出版社:Japanese Society for Food Science and Technology
  • 摘要:

    バクセン酸は,一価不飽和脂肪酸(モノエン酸)の1種で,炭素数18個,炭素鎖11位と12位の間にひとつの二重結合(不飽和結合)があり,その結合がトランス型である.IUPAC名は,(E)-11-オクタデセン酸で, trans-11 , 18 : 1と表記する.バクセン酸の幾何異性体(二重結合がシス型の異性体)であるシス-バクセン酸は,IUPAC名は,(Z)-11-オクタデセン酸で, cis-11 , 18 : 1と表記する.シスバクセン酸に対して,通常のバクセン酸をトランスバクセン酸と区別する場合もある. 炭素数18個のモノエン酸として知られているオレイン酸( cis-9 , 18 : 1)と,バクセン酸との分子構造関係は,図1に示した.オレイン酸のように,モノエン酸の二重結合がシス型の場合,分子の立体構造がその部分で屈折する.一方,モノエン酸の二重結合がトランス型の場合,分子全体の構造は,飽和脂肪酸のような直鎖状になる(図2参照).分子の立体構造の違いは,その分子の物理化学的特性にも影響を与える.例えば,二重結合がシス型のオレイン酸の融点は,約14℃であるが,二重結合がトランス型のバクセン酸やエライジン酸の融点はそれぞれ44℃,47℃で,分子の立体構造が屈折したオレイン酸の融点よりは高くなり,むしろ飽和脂肪酸であるステアリン酸(18 : 0)の融点(69℃)に近づく.この他にも,バクセン酸やエライジン酸は,極性有機溶媒に対する溶解度がオレイン酸より小さく,この特性は,脂肪酸分別法で利用されている. バクセン酸は,1928年に動物油脂から見つけられ,ラテン語のvacca(ウシ)から命名された.バクセン酸は,二重結合がトランス型であるため,トランス脂肪酸に分類される.ヒトを含む大部分の生物は,二重結合がシス型の不飽和脂肪酸しか合成することができないため,ヒトはバクセン酸を生合成することはできない.ヒトのバクセン酸の摂取源は,主として次の2通りある.ひとつは,反芻動物由来の肉,乳製品である.ウシやヒツジ等の反芻動物の胃内に寄生する微生物は,シス-トランスイソメラーゼという特殊な酵素を有し,シス型の不飽和脂肪酸から,トランス型の不飽和脂肪酸を生成できる.その宿主であるウシやヒツジの肉,乳製品には,トランス脂肪酸が2~8%含まれているが,トランス脂肪酸の中ではバクセン酸が主成分で,肉類のトランス脂肪酸のうちの約60%近くを占める場合もある1). もうひとつのバクセン酸の摂取経路は,部分水素添加油脂からである.油脂への水素添加とは,本来,油脂を構成する脂肪酸の二重結合部分に水素を付加させ,不飽和脂肪酸量を減少させる加工技術であるが,この加工法の副産物として,トランス結合が炭素鎖の5位から16位までの様々なモノエン酸のトランス脂肪酸異性体が生成する.水素添加加工中にトランス脂肪酸のひとつとしてバクセン酸も生成するが,その含有量は水素添加の加工法に依存して変化する.部分水素添加油脂は,ショートニング,マーガリンや揚げ油など様々な加工食品に使用されているので,部分水素添加油脂由来のバクセン酸も摂取することになる. 過去の疫学的調査研究等の結果から,トランス脂肪酸の過剰摂取は,動脈硬化などによる冠動脈性心疾患のリスクを高めることが判明し,各国は,トランス脂肪酸の摂取低減に向けて動き出している.日本では,トランス脂肪酸の平均的摂取量が国際機関の推奨範囲内にあったため,トランス脂肪酸摂取に対する具体的な規制措置は行われていない.バクセン酸はトランス脂肪酸のひとつで,食品に含まれるトランス型不飽和脂肪酸はバクセン酸以外にも多種あるが,個々のトランス脂肪酸を区別してヒトの健康障害に与える影響を調べた科学的データはほとんどなく,バクセン酸単独の健康障害へのリスクについても調べられていない.反芻動物由来の肉,乳製品に含まれるトランス脂肪酸については,米国,カナダ,台湾,韓国等では,部分水素添加油脂のトランス脂肪酸と同様に摂取規制の対象となっている.一方,トランス脂肪酸を最初に規制した国,デンマークでは,動物性脂肪等に含まれている天然のトランス脂肪酸は,摂取規制の対象外としている. 生体内に取り込まれたバクセン酸の一部は,生体内で共役リノール酸の一種に変換するという報告2)もあり,バクセン酸の今後の研究が待たれるところである.

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