特別なハードウェアやソフトウェアがなくても白黒濃淡画像を簡便に2値化して気孔図形を取得する手法として開発した‘多重2値化イメージング(MBI)法’について,穴径が一定であるが深さが異なる,および穴の深さが一定であるが穴径が異なる食パン内相模擬板を用いて,しきい値の設定根拠を検討した.そして,本手法の適用性を検証するために,食パンの気孔図形を本手法により作成し,汎用画像処理・解析ソフトウェアを用いて気孔特徴量を求めて山型食パンと角型食パンの気孔構造の違いを検討して以下の結果を得た. (1) MBI法の概略は,256階調の輝度値ヒストグラムから定式的に9個のしきい値を設定し,それぞれのしきい値で得られた中間2値化画像から不要な画像要素を除去して補正した2値画像を合成(論理和)することである. (2) 穴の輝度値は穴の深さに関連していると思われた.しかし,256階調の白黒濃淡画像の輝度値ヒストグラムから穴径を識別できなかった.したがって,設定すべきしきい値の数は,穴の直径や深さのパターン数に依存するのではなく,気孔画像の濃淡が10段階であることに由来すると推測した. (3) MBI法により市販食パンの内相すだちの良好かつ矛盾しない2値化画像が得られた. (4) 山型食パンでは,領域T1(断面の上部左側部),領域M1(断面の中部左側)および領域B2(断面の底部中央部)で,全ての気孔特徴量がほぼ同等であった.領域M2(断面の中部中央部)では,他の領域に比べて気孔数が少なく,気孔面積率,Y-フェレ径および楕円率が大きく,垂直方向を長軸とする気孔が多く存在していた.領域B3(断面の底部右側部)では,気孔数が最大であり,気孔面積率およびX-/Y-フェレ径が最小であった. (5) 角型食パンでは,領域M1の気孔面積率が領域T1と比較して大きく,垂直方向に成長した気孔が多く存在した.領域B2ではX-フェレ径が最大,Y-フェレ径が最小であり,ローフ中部および上部と比較して気孔数が増加した.領域M2では,気孔面積率が最大となり,領域M1に比較してX-フェレ径が大きく,Y-フェレ径が小さく,気孔の配向性に違いが見られた.領域B3では,気孔数が最大,X-/Y-フェレ径が最小であった.