糖尿病予防食設計の基礎的知見を得る目的で味噌の食後血糖に及ぼす影響について in vivo ,および in vitro において検討を試みた. 9種類の供試味噌を用いたヒト介入試験によるGI測定を行い,味噌によっては通常程度の味噌汁の摂取により,食後血糖上昇抑制に対し一定の影響を及ぼすことが示唆された.また in vitro において,食後血糖上昇抑制に関与する味噌中の因子について検討し,供試味噌15種類において,糖質消化酵素のヒト唾液およびブタ膵液α-アミラーゼ,ブタ小腸α-グルコシダーゼに対し,強い活性阻害が認められた.また,供試味噌のトリプシン活性阻害作用が確認され,更にELISA法により味噌中微量TIの定量値を得た.これにより,味噌の摂取によって膵酵素分泌を刺激しインスリン分泌に寄与する可能性が推測された.また,味噌の褐色度と食後血糖上昇抑制との関連を検討し,GI測定結果と味噌の褐色度において有意差は認められなかった.一方 ,in vitro における結果と褐色度との関連については,褐色度が大きいほどブタ膵液トリプシン活性を強く阻害する傾向が認められ,ヒト唾液α-アミラーゼでは味噌の褐色度と活性阻害で関係はみられなかった.また,ブタ膵液α-アミラーゼ,ブタ小腸α-グルコシダーゼは,味噌の褐色度が小さいほど活性を強く阻害したことから,褐色色素以外の成分がそれら酵素の活性阻害に寄与していることが考えられた. 以上により,味噌が食後血糖上昇抑制に一定の影響を及ぼすことが示唆され,今後味噌を応用した抗糖尿病食の開発が期待される.また,味噌の食後血糖上昇抑制因子として,味噌原料由来のTI, 味噌の褐色度に寄与する成分(メラノイジンを含む),その他味噌中の機能性成分等,複数の影響因子の作用が複合して関与する可能性が考えられた.