だしの濁りの生成原因とその原因成分を明らかにする目的で,各種節類およびそのだしの一般成分とだしの濁りとの関係を調べた.また,主たる原因成分と推察された脂質について,節およびだしにおける存在状態等を調べ,次の結果を得た. (1) だしの濁りと原料節の粗脂肪含量との間にはr=0.639,だしの濁りとだしの粗脂肪含量との間にはr=0.886の高い相関が認められ,濁りの主たる原因成分は脂質であると推定された. (2) だしの濁りに対して節の粗脂肪含量よりもだしの粗脂肪含量との相関係数が高いことから,粗脂肪の多い節のだしが必ずしも濁るわけではなかった. (3) だしをとることによる,節からだしへの脂質の移行量は1.5~3.3%にすぎなかった. (4) 削り節をSEMにより観察したところ,節中の脂質は主に脂肪球として筋繊維間に分布しており,だしをとることにより脂肪球は節よりだしに移行した. (5) だしの濁りの原因となる脂質の主成分はトリグリセライドおよびリン脂質と推察された.