低水温である海洋深層水を17℃に加温することにより,水温を一定に保持して養殖した殻長約8cmのアワビ(エゾアワビとメガイアワビの交雑種F1)足筋について,通年にわたり肥満度,遊離アミノ酸,ATP-関連化合物,破断強度などについて分析し,その季節変動について解析した.その結果いずれの項目も,年間を通じて大きな変動は見られなかった.このことは,一般に季節変動が認められる他の貝類と比べた場合,本養殖アワビF1交雑種の大きな特徴であることが明らかとなった.この養殖アワビF1交雑種の食味について,アワビの旬とされる夏季に漁獲された天然エゾアワビ,およびトコブシを対照として官能検査を行ったところ,天然エゾアワビと養殖アワビF1交雑種の間に有意差は認められず,本養殖アワビF1交雑種は十分に市場性を有する品質であると考えられた.