我が国におけるゴマ葉の食習慣はほとんどないが,アジアやアフリカではゴマ葉は食用として,あるいは伝統薬・民間薬として利用されている.このゴマ葉はポリフェノールを豊富に含むものの,その成分研究はほとんど行われておらず,不明な点が多い.そこで,ゴマ若葉中の豊富なポリフェノールに着目し,抗酸化性と活性成分について検討した結果,以下の知見を得た. (1) 3つのラジカル消去測定(DPPHラジカル消去活性,ABTSラジカル消去活性,スーパーオキシドアニオンラジカル消去活性)により評価したところ,どの測定法においてもゴマ若葉は大麦若葉やケールよりも高い抗酸化性を示し,その活性は桑葉に次ぐものであった.この活性は含有ポリフェノール量に依存した. (2) ポリフェノール含量当たりで抗酸化性を評価したところ,どの測定法においてもゴマ若葉と桑葉の活性差は小さくなり,中でもDPPHラジカル消去活性ではゴマ若葉は桑葉よりも強い活性を示したことから,ゴマ若葉には強い抗酸化性を示すポリフェノール成分が含まれると考えられた. (3) DPPHポストカラム法を用いて,含有成分並びに活性関与成分を調べたところ,ゴマ若葉中には少なくとも9つのポリフェノール成分が含まれ,うち4つが主要な活性成分であると考えられた. (4) 各種スペクトル分析の結果,主要活性成分の一つはフェニルプロパノイド配糖体であるアクテオシドであり,ゴマ若葉乾燥粉末中に1.2%含まれることが判明した. アクテオシドは様々な生理機能を有し,種々の薬用植物に存在することが明らかにされているが,豊富に含む植物は希である.本研究により,ゴマ若葉にアクテオシドが豊富に含まれることが判明したことから,今後アクテオシドを指標としたゴマ若葉の有効利用が期待される.