既報において生体内で産生される3種の活性酸素種(ROS)を用い,それらが示す標的蛋白質分解作用を阻止する活性として天然に存在する抗酸化剤の抗酸化活性を評価する方法が報告されている.しかしながら,もう一つの生体内産生ROSである過酸化水素については,その蛋白質分解能が低いために未評価であった.本報では,過酸化水素がDNA分子を分解することから,DNAを標的として次亜塩素酸ラジカル,水酸化ラジカルおよび過酸化亜硝酸ラジカルに過酸化水素を加えた4種のROSに対する食品由来の各種天然抗酸化剤のDNA分解抑制作用による抗酸化活性の試験を行った.DNA分子はタン蛋白質分解系と同様に,各種ROSにより濃度依存的に分解された.このDNA酸化分解作用を抑制する抗酸化剤の作用は,蛋白質分解阻止作用で観察されたと同様な活性酸素種に対する作用特異性を持つことが観察された.すなわち,次亜塩素酸ラジカルに対してはチキンエキスから得られたイミダゾールジペプチドであるアンセリン-カルノシンが,水酸化ラジカルに対してはフェルラ酸が,そして過酸化亜硝酸ラジカルに対してはビタミンCとイミダゾールジペプチドが強い抗酸化活性を示した.過酸化水素に対しては試験した抗酸化剤の中ではイミダゾールジペプチドが最も強い抗酸化作用を示した.またアンセリンはOH・ラジカルによるDNAの分解も阻止する作用を示したことから,生体内で産生される4種のROSによるDNA分解を全て抑制することが出来ることが示唆された.水酸化ラジカルと過酸化亜硝酸ラジカルに対する抗酸化作用はイミダゾールジペプチドのアンセリンによる作用であった.一方,ビタミンCは過酸化水素によるDNA分解を顕著に促進する作用を持つことが観察された.