熱湯ブランチング過程におけるカリウム溶出現象の解析を行った結果,熱湯浸漬過程における円柱状試料のカリウム含有量変化には拡散方程式の無限円筒モデルが適用され,拡散係数の値にはArrhenius型の温度依存性が確認された. また,最適なブランチング条件の把握を目的とし,ジャガイモのブランチングに熱湯浸漬,マイクロ波およびマイクロ波・熱湯併用法を適用して酵素活性,力学物性,カリウム残存率について検討したところ,以下の知見が得られた. (1) 試料中のパーオキシダーゼ活性の失活に要する時間は,熱湯ブランチングにおいて240s, マイクロ波および併用ブランチングにおいて120sとなり,マイクロ波を利用したブランチングでは処理時間が半分に短縮された. (2) マイクロ波のみによるブランチングでは,内部からの急速な加熱により,試料の損傷が見られたが,併用ブランチングでは,試料の損傷は観察されなかった.これは,試料に直接供給されるマイクロ波エネルギが小さかったため外部からの加熱となったことが原因であると推察された. (3) マイクロ波のみによるブランチングでは,試料の著しい軟化が見られたが,併用ブランチングでは熱湯ブランチングとほぼ同等の力学物性を維持した. (4) カリウムの残存率は,浸漬操作を含まないMW処理と浸漬操作を含む熱湯処理の間に有意差が見られた.併用ブランチングでは,処理時間が短縮されたものの,試料表面が高温になったため,カリウムの溶出がやや促進されたものと推察された.