酒類やパンなどの発酵食品に新しい特徴を付与するため,自然界からの Saccharomyces cerevisiae の新規分離株が必要とされている.我々は選択増殖培養とrDNA 5.8S-ITS領域のPCR解析を組み合わせた分離方法により,愛知県内のサクラなどの花から S. cerevisiae の新規取得を試み,6株の分離に成功した. 6株の S. cerevisiae 分離株について糖の発酵性と糖の資化性を調べた.糖の発酵性および糖の資化性プロファイルは5株が同一で,1株のみが異なった.6株の S. cerevisiae 分離株の糖の資化性プロファイルはいずれもK7株およびBy株とは異なっていた.また,6株の S. cerevisiae 分離株はK7株およびBy株に対してキラー性を示さなかった. 6株の S. cerevisiae 分離株のmtDNA RFLP解析を行った結果,2株間の一致を除いてそれぞれ異なるプロファイルを示した.Ty1 deltaエレメントのPCR解析の結果,6株の S. cerevisiae 分離株はすべて異なるプロファイルを示し,K7株およびBy株とも異なっていた.これらの結果から,6株の S. cerevisiae 分離株の遺伝的多様性が示された.