米粉パンにおける米粉割合を推定するための手法として半定量的な競合的PCR法を検討した.コメとコムギの葉緑体ゲノムの共通配列部分で作製したPCRプライマーを用いることにより,両者が競合的に増幅する一方,サイズが異なる増幅断片が得られることからゲル電気泳動で区別・検出できる.異なるDNA抽出試料,鋳型DNA濃度およびPCRサイクルを用いた条件検討の結果,コメとコムギに由来する増幅産物の量比は,PCR条件にはほとんど影響を受けず,また0-50%の米粉パンの分析において米粉割合にほぼ比例することが明らかとなった.一方で,増幅産物の量比は,米粉パンに原料として用いるコメの品種によって20%程度変動し,また,市販パンの分析においてそのパン種によっても変動することが示唆された.これらの結果は,本手法が米粉パンにおける米粉使用割合を大まかにではあるが簡易に推定できることを示すとともに,分析試料に適した対象試料(使用品種・パン種)を用いれば,より正確な定量が可能となることを示唆している.