市販の和牛,交雑牛,乳牛および輸入牛(豪州産)の皮下脂肪(SF)と筋内脂肪(IF)について,固相マイクロ抽出(SPME)した加熱香気成分を比較した.その結果SFでは,和牛はアルデヒド,アルコール類が,交雑牛ではアルカン,芳香族化合物類が,輸入牛はエステル類が多かった.和牛香に寄与するラクトン類(γ-あるいはδ-Cn (nは炭素数)と表す)については,和牛ではγ-C7,C8,C9が,乳牛と輸入牛ではγ-C10,C12,δ-C10が有意に多かった.交雑牛のラクトン類組成は乳牛に似ていた. IFでは和牛はアルカン,芳香族化合物,エステル類が多く,輸入牛はアルコール,アルデヒド類が多かった.いずれの牛でもSFとIFで香気成分の構成割合が異なっていた.ラクトン類は和牛のγ-C4,C6がその他の牛より多い傾向にあり,逆にδ-C6,γ-C7,C8,C9はその他の牛より少ない傾向にあった.交雑牛のラクトン類組成は乳牛と似ていた.