高い機能性を持つが安定性に乏しいため食品素材としての利用が進んでいないナス由来のアントシアニン色素「ナスニン」を,ナスの外果皮から安定性を保った状態で回収して有効活用することを目指して試験を行った. ナスニンはナス皮から0.5%酢酸水溶液により抽出されるが,その抽出条件を検討した結果,始めの3回の抽出液を廃棄することにより共存するクロロゲン酸を効率よく除去することができた.その結果,抽出液を固相抽出法により分画することで,185gのナス外果皮から80.6mgのナスニンを純度86.5%で得ることができた.固相抽出ナスニンはpH 4.5の溶液中で4°C,暗所にて2週間保持した所65.1%に減少していた. 一方で,抽出液に添加したカゼインを等電点沈殿することによりナスニンを回収率60.8%でナスニン-カゼイン複合体として得ることができた.この複合体中のナスニンは4°C,暗所にて2週間保存しても有意な減少は認められなかった.さらに,凍結乾燥したものでは室温条件でも89.4%が残存しており高い安定性が認められた.