高静水圧は発酵の制御に有望な技術だと考えられている.高静水圧の効果を把握するため,キムチ発酵における微生物叢の挙動をPCR増幅したDNAの変性密度勾配ゲル電気泳動とゲルから抽出したDNAの塩基配列シーケンシングにより調べた.キムチから Lactobacillus , Leuconostoc および Weissella 属を含む11種の乳酸菌を分離した.60日間のキムチ発酵過程では,pHは3.9まで二段階で低下した.乳酸菌濃度は15日目に最大になり,その後3.2×108 cfu/mlに保たれた.乳酸菌の中では L. sakei が一定して認められ, L. plantarum が21日目以降に見られた.酵母の菌濃度は15日目に最大となり1.4×108 cfu/mlに達し,27日目以降は検出限界以下へと減少した.酵母では Kazachstania servazzii が圧倒的に優占化していた.発酵21日目に200 MPa,60分の高圧処理をキムチに加えたところ,以降のpH低下が見られなかった.乳酸菌と酵母の菌濃度は急激に低下し,それぞれ8.3×105 cfu/mlならびに検出限界以下となり,乳酸菌は緩やかに回復したが,酵母は速やかな回復を見せた.しかし,高圧処理の有無による微生物叢の明確な違いは観察されなかった.発酵開始時における L. sakei と K. servazzii の添加も試みたが,明確な効果は見られなかった.