メタボリックシンドロームは国内外において最も深刻な問題であり,脂肪肝によって肝機能を低下させる.大豆食品が肝機能改善に効果的であることが知られているので,本研究では高脂肪高コレステロール食投与時の乳酸発酵豆乳摂取による肝臓の脂質代謝改善効果を明らかにするために,2通りの試験食,すなわち 30 % TG,0.5 %コレステロールを含む脂質高含量食群,および 15 % TG,0.125 %コレステロールを含む脂質中含量食群をそれぞれ 7週齢 SD系雄性ラットに投与し,同時に乳酸発酵豆乳を摂取させて5週間飼育し肝臓成分,血中成分を調べた. 乳酸発酵豆乳の摂取によって脂質中含量食群で血漿TC,TG濃度の有意な低下が認められたが,脂質高含量食群では有意差はなかった.肝臓脂質量については,コレステロール量が脂質高含量食群・中含量食群とも有意に減少し,TG 量が脂質中含量食では有意に減少したが,脂質高含量食では有意な減少はなかった.肝臓の脂質代謝関連遺伝子については,乳酸発酵豆乳摂取によって脂質中含量食群での FAS 抑制と SREBP-2 促進が認められた. 以上の結果から,脂質高含量食投与では,脂質過剰蓄積による肝機能低下のため,乳酸発酵豆乳による血中脂質低下効果は認められなかったが,脂質中含量食投与では,乳酸発酵豆乳による肝臓遺伝子発現調節作用をともなった肝臓脂質蓄積抑制効果と血中脂質濃度上昇抑制効果が認められ,肝臓の脂質代謝を改善することが示唆された.