本研究では,不知火姫菊の花弁および葉水抽出物がヒト由来のがん細胞の増殖に及ぼす影響について検討した. 花弁および葉水抽出物はヒト乳がん細胞株 MCF-7 において,終濃度25 μg/mL以上で濃度依存的に増殖を抑制した.さらに,いずれの抽出物も MCF-7 細胞に対して正常線維芽細胞より約4倍以上強い効果を示した.また,花弁抽出物の活性成分は分子量 10 000 以下の低分子成分であることが示唆された.一方,葉抽出物には低分子と高分子物質が存在することが示唆された.さらに,抽出物の花弁抽出物の活性には熱安定性が低い成分,葉抽出物は熱安定性の高い成分が関与していることが示唆された.加えて,いずれの抽出物においても,ポリフェノール性と非ポリフェノール性の増殖抑制因子が存在することが示唆された. 以上の結果は,現在製品原料として使用されている花弁に加えて,葉も生理活性物質の供給として利用可能であることを示唆しており,抗がん作用を有する複数の生理活性成分の存在が示唆された.