米ペーストの利用拡大を目的として,40および60°C加熱乾燥による粉末化を試みた.その結果,加熱乾燥粉末の性状や製パン性に関して,以下の知見が得られた. 米ペーストを60°Cで加熱乾燥しても,デンプンは糊化することなく粉末化できた.乾燥粉末の平均粒子径は乾燥前の米ペーストよりも大きかったが,水で復元することによって米ペーストの平均粒子径に近づいたため,加熱乾燥が粒度分布に与える影響はほとんど認められなかった.乾燥粉末の損傷デンプン率は米ペーストと同程度で,乾式気流粉砕法で製粉した米粉よりも低かった.乾燥粉末は米ペーストよりも吸水率が高く,離水率が低かったが,米粉ではこれらの値は高かった.米ペーストと60°C乾燥粉末のRVA測定による糊化特性値に差異は認められなかったが,40°C乾燥粉末では,最高粘度とブレークダウンが米ペーストよりも低下した.乾燥粉末で強力粉の30%を置換した食パンは,膨化率や比容積,クラムの硬さや凝集性が米ペースト置換食パンと同等であった.ただし,官能評価では,60°C乾燥粉末置換パンは,米ペースト置換パンよりももちもち感が増したと評価された. これらの結果より,米ペーストを加熱乾燥して得た粉末は,米ペーストの特性を有した状態で粉末化されており,乾式気流粉砕法による米粉の欠点が改善され,さらに利用までの貯蔵性や移送性の向上が期待できる,新しい米粉であることが確認できた.なお,60°C乾燥粉末は米ペーストに近い糊化特性を示し,置換によってパンにもちもち感を付与できることから,乾燥温度は60°Cの方が40°Cよりも適温と考えられた.