イモ類およびダイコンの熱湯浸漬過程における糊化熱量,電気インピーダンス,含水率および熱伝導率の測定を行い,以下の知見を得た. (1)ジャガイモやナガイモはサトイモに比べ低い温度で糊化が進行し,短時間の熱湯浸漬処理で大きく糊化熱量が低下した. (2)いずれの試料においてもCole-Coleプロットにより描かれる円弧は,5分間程度の熱湯浸漬処理で縮小,消失し,細胞膜の健全性が損なわれることが示唆された. (3)イモ類では,加熱に伴い含水率の増減が見られ,これが熱伝導率の値に影響を与える可能性が示唆された.一方で,ダイコンでは含水率と熱伝導率の値に相関は見られなかった. 以上のことから,イモ類やダイコンの熱湯浸漬過程において熱物性や電気的特性,含水率などが変化することが示された.しかしながら,デンプンの糊化や細胞膜の損傷などが組織全体における水分分布,密度などに及ぼす影響についてはより一層の調査が必要となり,加工プロセスにおける各種物性変化のメカニズム解明の一助となる.