凍結乾燥方法により食品を乾燥した場合に,その得られた乾燥食品は組織が多孔質であるため,カロチノイド,脂肪は酸化がすみやかで,そのために品質が低下する場合がしばしばある。 この酸化現象を抑制するためには,物理的に酸素の影響を取り除くか,化学的に酸化の第1次,第2次またはその後の連鎖反応を阻止するかが考えられる。前者は従来から不活性ガス中に製品を貯蔵するとか,可溶性澱粉CMCなどによる表面のコーティングによって防止しているし,後者は各種の抗酸化剤を添加している。 本実験において見出し得た結果はつぎのごとくである。 (1) 凍結乾燥製品はcase-hardeningがなく,酸化表面積が拡大されているため,明らかに酸化されやすい状態の組織になっている。 (2) 酸化速度は共存する成分によって明らかに差がある(カロチノイドについて)。 (3) カロチノイドの酸化防止にはフェノール系抗酸化剤よりLまたはD-イソ・アスコルビン酸のほうが酸化防止効果が高い。 (4) L-アスコルビン酸とD-イソ・アスコルビン酸のカロチノイドの酸化防止効果は後者のほうが高い。 (5) D-イソ・アスコルビン酸をカロチノイドを含む凍結乾燥食品の酸化防止剤として使用する場合の添加量は,乾燥前の被乾燥食品に対し100~300mg%が適当である。 (6) 凍結乾燥したカキ(貝)の脂肪の酸化防止には,フェノール系抗酸化剤のほうが,LまたはD-イソ・アスコルビン酸より効果が高かった。 フェノール系抗酸化剤とLまたはD-イソ・アスコルビン酸を混合使用した場合は,その効果はそれぞれ単独に使用した場合よりすぐれていた。