日向夏ミカンを外,皮内皮および果汁に分かち,それぞれについて成分分析を行なった結果,つぎのような知見を得た。 (1) 外皮はペクチン,粗脂肪および灰分に富むが,全糖の無水物に対する割合いはもっとも少ない。有機酸にも乏しい。 (2) 内皮は全果の約9%を占め,有機酸はきわめて乏しくかつ苦味が感じられない。全糖量は外皮および果汁の中間にあり相当の甘味を有する。 (3) 果汁の主成分は糖と有機酸,とくに不揮発酸から成っており,その割合いはほぼ80:20であり,還元糖が非還元糖にまさっているが,非還元糖は果皮に比べて多く,おそらく大部分がショ糖であらう。香気はきわめて乏しい。 (4) 還元糖に対する非還元糖量は夏ミカンなどに比べて少ない。とくに外皮において著しい。果汁は割合いに多いほうであるがそれでも約2/3であり,一方帯状濾紙クロマトによれば,ショ糖のグルコースおよびフラクトースの和に対する比は1/2あるいはそれ以下である。 (5) 還元糖成分としては3区分ともグルコースおよびフラクトースが濾紙クロマトで確認された。そのほかにシュクロースが果汁において確認できたが,外皮内皮では非還元糖の存在がベルトラン法で認められるに反し,濾紙クロマトでは確認できなかった。この理由は不明である。 (6) 果皮の有機酸は乏しいが果汁中にはきわめて多く,クエン酸とリンゴ酸を主とし,ことに前者が多いものと推察される。その他少量のシュウ酸,酒石酸およびコハク酸が確認された。