著者らが食品の膨潤をその総体積変化によって測定する方法を用いて実験を行ない,前報までに報告した結果にひき続き塩類溶液中における精白米および精白丸麦の膨潤速度を測定し,つぎのような結果を得た。 (1) 純水中で膨潤させたときの総体積変化の測定値は,精白丸麦については従来よく知られている形の傾向をとるが,精白米については異常を示すことは前報までに報告したが,塩化ナトリウム:17.1mM,塩化カルシウム:0.5, 1.0, 3.0mM,塩化マグネシウム:0.5,1.0, 3.0mM,塩化アルミニウム:3.0mMの塩類溶液中においても,精白丸麦では正常,精白米では異常であった。 (2) 精白米の場合に,膨潤の初期に異常な総体積の増加がおきるが,その原因となっている体積の増加は,水に塩類が含まれていることによって影響を受けないとみられる。 (3) ナトリウムイオン,カルシウムイオン,アルミニウムイオンはいずれも精白米および精白丸麦の膨潤を阻害する傾向を示し,マグネシウムイオンは促進する傾向を示した。また,精白米の場合について,塩類の濃度と影響の大きさとの関係はカルシウムイオンおよびマグネシウムイオンにおいていずれも1mM>3mM>0.5mMの順であった。