インスタント・ティーが普通市販茶に比べて,香味の低いことが問題とされていることから,このような品質の低下が,製法のどの処理工程でもっとも起こるかを調査した。実験に当たっては,香味に関係すると思われるV.R.S.の状態を調べたが,その結果を要約すると次のごとくである。 茶のV.R.S.は抽出液にも浸出するが,さきの場合6)と同様,茶種によって異なり,ほうじ茶でもっとも多く,ついで紅茶,煎茶の順であった。 煎茶に比べほうじ茶にV.R.S.が多いことから,さらに同一茶(煎茶)について,ほうじたものとほうじないものの比較を行なった。その結果は,ほうじることによって,V.R.S.は著しく増加することが認められた。 また,市販のインスタント紅茶を主に,製品におけるV.R.S.を調査した。それによると,乾燥したものにもV.R.S.がある程度は含まれている。 これら予備調査の結果から,煎茶,紅茶,ほうじ茶を多重段浸出法によって抽出し,その抽出液とインスタント・ティー,ならびに乾燥方法の違いについて試験した。 抽出液の濃度とV.R.S.との関係を回帰式で検討した結果は,煎茶ならびに紅茶は直線回帰と思われたが,ほうじ茶は直線よりややゆるいカープを示した。 茶のV.R.S.は原料でもっとも多く,抽出-乾燥と工程を経るに従って減少した。さらに乾燥方法によっても異なり,真空乾燥によるものより,凍結真空乾燥の製品のほうが多い結果を得た。また,この関係を総合すると,原料の値を100とした場合,その残留率は抽出液で39.0~93.0%,乾燥方法の違いは,凍結真空乾燥によるもの約22.0~74.0%,真空乾燥によるもの7.0~12.0%と差が認められた。 以上のような実験結果からV.R.S.が香味に関係するとした場合,インスタント・ティーとなるまでには,かなりの香味成分が失われるものと思われる。