糖としてショ糖,ブドウ糖,有機酸としてクエン酸,リンゴ酸,酒石酸,フマール酸,フマール酸モノナトリウム,桃および洋ナシ果実内に存在する成分としてキシローズ,アラビノーズ,ガラクチュロン酸などと,L-アスコルビン酸およびエリソルビン酸間の着色を,桃果肉汁を基質として試験管内で加熱して比較した。有機酸のなかではフマール酸モノナトリウムが他の酸と異なった傾向を示したが,これはpHの相違によるものと解され,またアスコルビン酸が加わるといずれも着色したが,有機酸間に相違はほとんどみられなかった。キシローズ,アラビノーズは着色せず,ガラクチュロン酸は著しく着色したが,いずれもアスコルビン酸との着色はあってもわずかの程度であった。 合成法によるDL-リンゴ酸の罐詰内における着色とアスコルビン酸の分解に対する影響を検討した結果,クエン酸に比較してわずかに着色し,アスコルビン酸の残存量も幾分少ない傾向はみられたが,実用的には差支えない程度で,罐詰製品の酸味も好ましく,経済的にも有利であることから利用価値のあることを認めた。