ジャガイモ澱粉と無水コハク酸とのエステルはエステル化度の低い場合にはジ・エステル型の結合をとるがエステル化の増すにつれてモノ・エステル型となるのではないかと推測された。エステル化度の増加につれて冷水,ピリジン,メタノール,80%エタノールに対する膨潤性が良好となり,エステル化度1.82のものは,これらに対し完全に透明な澱粉粒を与える。 エステルはβ-アミラーゼの作用を受けず,また,α-アミラーゼの作用もほとんど受けなかった。したがって,ヨウ素反応もエステル化の進むにつれて減少していった。 水懸濁液の粘度はエステル化の進むにつれて大きくなるが,いずれも加熱によって急激に低下を示した。80℃に10分保ったものの粘度は1夜程度の時間をかけ,きわめて徐々に,もとの温度に復した場合には,粘度変化は可逆を示した。 過ヨウ素酸酸化によりエステル化の位置を考察したが,それは,すべての末端の各炭素,および中間部分の糖の6位の炭素が主であり,エステル化が進むにつれて次第に鎖中の2, 3位の炭素にもおよぶと推察された。