パパイン,パンクレアチン,放線菌プロテアーゼおよび Asper gillus oryzae TPR-18の産生する酵素を用いて牛肉に対する人工消化作用を比較した。 凍結乾燥牛肉に対する場合は,酵素によりその至適pHがカゼィンを基質としたときと異なっていた。たとえば,パパインはpH 9付近,プロナーゼはpH 7~9の間,またTPR-18酵素はpH 4付近でもっともよく作用した。 各酵素を同力価(基質カゼイン)となるようにしても,pH 6で作用させたときは,牛肉に対してパパインがもっともよく,これについでプロナーゼ,TPR-18酵素およびパンクレアチンの順であった。 人工消化の温度をかえたところ,パパインは60~80℃,プロナーゼおよびパンクレアチンは60℃, TPR-18酵素は40℃でもっともよく作用した。しかし,それぞれの至適pHで作用させたときは,温度と人工消化作用の関係が大体同じ傾向で,いずれも60℃でもっともよく,またその人工消化の程度も,パパイン,プロナーゼおよびTPR-18酵素ともほとんど同じであった。 つぎにコラーゲンおよびエラスチン区分の蛋白質に対する各酵素の作用を比較した。60℃のとき,コラーゲンはパパインによりもっともよく消化され,これについではプロナーゼ,TPR-18酵素およびパンクレアチンであった。温度が40℃のときは,全般的に消化の程度が低かった。エラスチンはパパインによりもっともよく消化された。しかしTPR-18酵素にはほとんど作用されず,とくに40℃のときは,TPR-18酵素のみでなく,パパイン以外の酵素にはほとんど作用されなかった。