もみがらセルロースを効果的に酵素糖化する諸条件について検討し,次の諸点を明らかにした。 (1) もみがらのかさのある強固な構造体を凍結粉砕法により簡単に破壊し粉末化することができた。凍結粉砕したもみがら粉末は,体積が約1/4.4に減少し,X線分析の結果からセルロースに結晶構造は認められず,セルラーゼによる分解性は約12倍に増大した。 (2) 凍結粉砕したもみがらのセルロースの酵素糖化率は35%であるが,凍結粉砕もみがらから酸抽出したセルロースおよび脱リグニンしたセルロースは,24時間で85%以上分解された。 (3) もみがらセルロースに対し,T. virideセルラーゼまたはA. nigerセルラーゼは,各々単独ではほぼ同じ分解率を与えるが,共存することによりセルロース分解に促進効果を示した。 (4) もみがらセルロースの酵素糖化は,リグニンによって阻害を受けているが,ヘミセルロースおよびケイ酸は阻害していなかった。 (5) 以上の結果は,もみがらのように多成分系から成るセルロース試料では,セルロースの結晶構造が消失していても,リグニンが酵素分解を妨害している。しかし,リグニンを除去したセルロースでは,C1-酵素(T.viride)を必要とせず,Cx-グルカナーゼとβ-グルコシダーゼの2段階反応ですみやかに分解されることを示している。