未利用種子資源の利用及び食品脂質化学の見地から5品種('新土佐''きぬた''東京''近成芳香''白菊座')のカボチャ種子に含まれる総脂質の脂質組成とトリアシルグリセロール組成を膵臓リパーゼによる選択的加水分解,薄層クロマトグラフィー及びガスクロマトグラフィーの併用によって研究した。 カボチャ種子の総脂質含有率は'白菊座'の29.1%から'新土佐'の37.4%の範囲であった。 総脂質の脂質組成はトリアシルグリセロール(68.3~82.3%),ジアシルグリセロール(2.5~8.7%),モノアシルグリセロール(1.0~2.9%),遊離脂肪酸(6.2~10.3%),ステロール(1.0~1.3%),ステロールエステル(0.6~1.0%)及び複合脂質(4.0~7.3%)であった。 複合脂質区分はホスファチジルコリン(21.6~25.4%),モノガラクトシルグリセロール+ボスファチジルエタノールアミン(15.4~25.9%),ボスファチジルイノシトール(16.0~23.2%),アシルステリルグリコシド+セレブロシド+未知物質(11.5~24.0%)及びホスファチジルセリン+未知物質(16.4~18.9%)より成っていた。 トリアシルグリセロール組成は,膵臓リパーゼによる選択的加水分解によって,トリアシルグリセロール区分の脂肪酸組成から計算した。 カボチャ種子の主要トリアシルグリセロールはPOO, OLP, OOO, OOL, OLO,OLL, LLP, LLL, LPP, LOL及びPLPであった(P:パルミチン酸,0:オレイン酸,L:リノール酸)。カボチャ種子脂質は脂肪酸組成及び脂質組成から検討すると,他の液状植物油脂と同様,すぐれた食用油脂になりうることがわかった。