アン粒子中のデンプンの糊化が抑制される原因を解明するために,アズキデンプン(AS)のアミログラム(Am)に及ぼすアズキタンパク質(AP)の影響を調べた。あわせて,卵アルブミン(OA),カゼイン(C),ゼラチン(G)およびポリペプトン(PP)の影響を,またバレイショ(PS),サツマイモ(SPS),トウモロコシ(CS)およびコムギ(WS)の各デンプンのAmに及ぼすAPの影響を調べた。その結果,次のことが明らかになった。 (1) ASのAmの粘度上昇開始温度(T0)は,APの添加量にほぼ比例して上昇し,例えば,50%添加では約4℃上昇した。95℃, 10分保持後の粘度は,APの10%添加でやや減少したものの,20%添加では対照と変わらず,50%添加では約1.5倍に増加した。 (2) ASのAmに及ぼすタンパク質(20%添加)の影響は,どのタンパク質もT0をわずかに上昇させた。C, GおよびPPはいずれも95℃に達したときの粘度および95℃, 10分保持後の粘度を減少させたが,OAはこれらを増加させた。 (3) APの20%添加によって,PSのAmのT0は約4℃上昇し,約90℃より高い温度での粘度は増加した。SPSの場合には,T0は変わらなかったが,最高粘度が減少した。CS, WSの場合には影響がわずかであった。 以上の結果から,ASの糊化に伴う膨潤は,APの添加によって,添加量が少ないときには抑制されるが,添加量が多くなると,高温領域ではむしろ促進,または促進と同時に粒の崩壊が防止されると考えられた。また,デンプンとタンパク質の組み合わせによって,膨潤に対する影響は異なっていると考えられた。